樗の日々

28歳のわたしを綴る。

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

台風

少し前のコメディ映画を観た後、部屋の電気を消した。 網戸にした窓を覆うレースカーテンは、街の光を受けて奇妙な光沢を帯び、強い風に膨らんではうねった。何かに似ている、と考えて、それがエコー写真だと気づいた。白黒にざらざらとした映像に、何故かそ…

占い

全然知らない、使う言葉も違うおばさんに、あなたの人生、これから先、少なくとも1人ではない、さびしくないよ、と、言われた。 6月の東アジアの小さな島。 直前まで互いの仕事がどうなるか分からなくて、前日に「行ける?」「行けるー」だけで現地集合した…

消費と創造

0から物事を創り出すことがとてつもなく苦手だ。昔から、ずっと。 例えば高校の授業で、大学の講義で、会社の研修で、本題に入る前のお遊びとして、曖昧なお題を出されアイディア性を試されるタイプの演習が大嫌いだった(正しくは、現在進行形で大嫌いだ)…

愛していた?

大学院生時代に、好きな人がいた。 彼のことを時々考える、それほど昔の話でもないのにその時の気持ちはとても穏やかで、晴れ渡る冬の日に顔も知らない先祖の墓参りをする時の気持ちにそれはとてもよく似ている。 一つ年下の、背が低く無口な男の子だった。…

はじめに

28歳になった。 27歳も半分を過ぎた頃、「28歳になってしまう」という妙な焦りがくすぶり始めた。 私の中に、「成人」や「還暦」といった多くの人たちが共有する節目とは別の、ごく個人的な境界があるようで、28という数字はどうやらそれにあたっていた。28…